カラー&モノクロネガ 自家現像
自家現像の手引き 〜機材、薬品、手順〜
フィルムを現像に出し「一週間かかる 」と言われジリジリしたことはないだろうか。コストに追われて出した格安現像店の仕上げに憤慨したことは?そもそも現像って自分でできるの?できるなら、方法は?と思ったことはないだろうか。
このページでは、私の調査と試行錯誤の結果をお見せする。過程については長くなるので省くが、少しでも参考になれば幸いである。 (ちょっとカッコよく書いてみた)
自家調合の話が出てくる。もっとこうした方がいいよ等の助言、やってみたよ報告(自己責任で👍)は大歓迎なので、お気軽にコメント下さい。
揃えるもの
機材編
・現像タンク・リール
基本なんでもいいが、220フィルムを使いたい人は現在パターソン一択。220用金属リールは数がとても少なく、探すのに大変骨が折れる(120用は多く出回っている)。ステンレスのものは薬品耐久性に優れるが、撹拌にコツが必要だ。しかし、慣れればプラリールも金属リールもほとんど一緒なので、特にどっちがどうということはない。マスコタンクを崇拝する方も散見されるけれど、それは多分、神話。好きなものを使いこなせればいい。
Amazonにはこれしか無かった。いきなり8本はキツイな。ヨドバシはじめ家電量販店のサイトで、もっと小さいものを購入可能。私は135フィルムを2本orブローニーを1本処理できる「ユニバーサル」タイプを使っている。
専用のホースがあるのだけど、使うと水洗がはかどる。
こっちも持ってる。
・写真用手袋
レンズの後玉より大事なネガに手の油分をつけるなど言語道断。専用の手袋の購入を勧める。で、汚れてきたら洗う。洗うと少し縮むので大きめを買うと良いかも知れない。
Kenko 手入れ 保管 管理用品 Harbor 編集・整理手袋 GM-2 [2枚組セット]
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・ゴム手袋
薬品を扱う時に用いる。できれば防護メガネも欲しい。
ラテックスの使い捨てが便利。最近はフィルムをリールに装填するとき、手の汗でダークバッグ中に湿気がこもり、フィルムにホコリがつくといけないのでゴム手袋で作業している。
・エプロン
薬品が衣服に付かないように。もしもの時は速攻着替えること!
・フィルムピッカー
現像するとき、フィルムのベロ出しに使う。ベロを出さずに栓抜きや缶切りを使って、パトローネを開けてしまう方法もある。どちらでも、お好きな方でどうぞ。
・薬品の保存容器
我が家では固体→空瓶、液体→ペットボトル、と分けている。
・はかるものいろいろ
メスカップ
だいたいで計るとき使う。1L、2L用があれば便利。
細かい計算のとき用いる。私はテキトーな人間なので、計量くらいは正確に…とココだけ張り切っている。。精度が欲しいならこういうガラス製のものを使うといい。実験室ぽくってカッコイイし。でも風呂場で割ると悲惨です、後片付けが。
はかり
デジタルのものを勧める。キッチン秤でよい。精度も高い方がモチロンよいが予算に応じて買うべし。
温度計
継続的に温度を知りたいものはアナログで、パッと測りたい時はデジタルで。私はデジタル一本だけ。
タイマー
突然ウンともスンとも言わなくなることがある。スマホのタイマーでいい。
このアプリはもっと便利。LabTimer on the App Store
完全防備。
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・フィルムクリップ
これを買っておけば悩まなくて済む。私はフィルムの下に挟んだ洗濯バサミにハンガーを引っかけてオモリにしている。
ブローニーに普通の洗濯バサミだと湾曲してしまうので、幅広のものを使うか、乾燥後に改めて重しを乗せて平らにするか。
・ネガシート
安いものでよい。できれば後でネガアルバムにできるもの。現像してただネガシートに収納、だけでは後で地獄を見る。
昨日は半年サボったネガの整理。数台カメラを持っているので「撮った順」が難しかった。
— ニコノス (@nikonosF) 2016年12月10日
わかりますか?ネガ整理で休日を終える気持ち。あの写真はここだ、とわかるうちに撮影終了の年月日だけでも書いておこう。私は紙の短冊に「'16 11/15 後楽園 紅葉 A君 研究室飲み会」みたいに書き付けて挟み込んでいる。
フィルムをスキャンした時、PCのデータ名とネガシートに1716('17年 16本目の意)など番号を振っておくと焼き増しのとき探しやすい。
ゴールまで、もう一歩。
薬品編
Part1 カラーネガ用
現像液+スターターのみ既製品を買っている。漂白、定着液は自家調合。
手順とともに紹介する。
発色現像
オリエンタル コダックC-41RA互換"BAN-1R"
1Lのとき(50℃温水660mL→A60mL→B15mL→C15mL、水225mL、スターター25mL)で混ぜると30℃付近の現像液が完成。ほぼワンショット(使い回しナシ)だが24枚撮りとか、クロスプロセスの現像しようかな、という時は一回使った液を再利用することがあるくらい。
発色現像は、30℃-8分または38℃-3分15秒。処理に長い時間をかけると、より高解像な像が得られる感がある。現像不足も防げる。ただしコントラストが高くなるわけではない。経験上、最も大事なのは液の濃度だ。これさえ合って入れば経験則で「温度が0.7℃低いから現像時間+30秒チョイかな…」みたくイジれるのも、ひとつの利点。
自家現像には1つ悩みどころがある。現像ムラだ。はじめてのモノクロネガ現像で出た。
特にそれから方法を考えたわけではないけれど、以来現像ムラとは無縁の日々だ。いつもパターソンのタンクで倒立撹拌はせず、攪拌棒で時計回り、反時計回りに始終クルクルやっているだけであるが…。
これは理論ではなく経験なので、とにかく場数を踏んで撹拌のコツを覚えましょう。
漂白
水(40℃) 800mL
赤血塩 50g
臭化カリウム(ブロムカリ) 15g
溶解、水を加えて1000mL
35-40℃で3分
上の処方か、既製品の漂白液をそのまま使う。こちらは35-40℃で45秒。
5,6回使ったら廃棄。2回目からは+30秒ずつで処理。
ここにも水洗を挟む。その間にタンクから排出した漂白液を元のボトルに戻し、定着液の準備。
定着
モノクロフィルムと共用。
Kodak F-24処方
水(50℃)500mL
ハイポ(チオ硫酸ナトリウム) 240g
亜硫酸ナトリウム 10g
亜硫酸水素ナトリウム 25g
水を加えて1000mL
35-40℃で4分。硬膜化はされない。
定着液はけっこう長く使える。私はちょっと多めに作って10回(つまり、135フィルムを20本)くらい使い回すのだが、その度に+30秒で処理する。
定着がきちんとなされていないと、もやっとしたネガになり、さらに保存性も著しく低下する。
こちらも既製品の定着液を買えば失敗はまずない。35-40℃で1分30秒。ただ、大きな容れ物で届くので、早めに使い切らないと劣化するおそれがある。定着液の材料はさほど高価なものではないので、自家調合でもコストはさほど跳ね上がらないだろう。
漂白液と定着液は、現像液より多くフィルムを処理できる。しかし、平均処理可能本数は知っておくべきである。
既製品なら、容器の後ろやデータシートに書いてあると思うが、自家調合、または何本処理したか忘れた場合、自分で調べなくてはならない。
以下に定着液のテスト法を紹介する。
・未露光フィルムを安全光下で新しく調合した定着液に浸け、透明に抜けるまでが「標準時間」
・何本か処理した液を用いて同様の作業を行い「標準」の倍以上、時間が掛かるようなら使用を止めるべし。
薬品は森本薬品さんで購入している。 http://www.morimotokasei.co.jp/smartphone/list.html?category_code=ct18
最後に水洗(10分以上)してドライウエル浴。以前テストフィルムをドライヤーで乾かしたことがあったが、ホコリだらけで見られたものではなかった。温水シャワーを壁一面に浴びせホコリを落とした浴室の扉をピッタリ閉め、換気扇をかけて4時間放置。その日の湿度により乾燥にかかる時間は違うが、コマのないところの乳剤面を触ってペタペタしていなければOKだ。
Part2 モノクロ用
ここでは私が現在取っている方法のみ記す。カラーは半年くらいやっているけど、モノクロはキャリアが短い(始めたばっかり)ので、「とりあえず像は得られますよ」という程度である。幸いモノクロについては諸先人が書き残された優秀な資料が溢れているから、そちらを併せてご覧になることを強く勧める。
現像
フジ スーパープロドール
5L用の容量が300gだから、各自必要量を計算して下さい。私は1:1希釈でやってます。
停止
クエン酸
これは酢酸のように臭くないし、料理や掃除にも使えて重宝する。アルカリの現像液を酸で止めるだけなので、水洗で代えることができる。私は量も時間もテキトーである。1分くらいかな。しかし、あまり大量に入れてしまうと化学変化により画像に斑点が出来るので注意。キッチリやりたい人は、モノクロ停止液処方の酢酸水溶液のpH(約3.5)と同じになるよう調整すること。ただし、定着の前に予備水洗を省かないこと。
定着
カラーと共用、時間も共通。
水洗
フジQW浴1分+水洗10分以上
ある程度フィルムを貯めた方が効率よく現像液を使えるが、未現像フィルムをどこに置いておくか、というのが問題だ。いろいろ考えた結果、未現像フィルムは冷蔵庫のチルドに詰め込んでいる。なぜなら、これが一番長持ちすると予想されるから。写真フィルムは化学変化である。温度が低い方が無駄な変化が起きなくて済むのだ。
kodak映画用フィルムの説明書に"生フィルムは13℃以下で保存すべし、長期にわたる保存は-18から-23℃で"とあるが、撮影済みのものは速やかに現像することを推奨している。
厳密な管理下において実験してみなければわからないけれど、経験上では結露した水滴による被害は出たことがない。
※注意
薬品の管理であるが、子供・ペットには注意。同居人がヘンな気を起こして飲んでしまう、なんてことも想定して万全の対策を取っておくこと。処理薬品は盛りつづければ殺人も可能だ。
廃液に関しては、近くの業者さんに委託する。規定通り処理しないと犯罪である。
本番のまえ一度は必ずシミュレーションをすること。業務用ネガの24枚撮り、一番安い120フィルム(使い終わったらテストフィルムにしよう)でいいから勉強のために1本犠牲にするといい。そうしないと大事なネガが「練習用」に化ける。ちなみに私も1度やらかした。
失敗例
成功例
以下、調査にあたり主な参考とさせて頂いたサイト。お世話になりましたm(_ _)m
カラーネガフィルムの自家現像をやってみた - ドール写真日記