カラー自家プリント、はじめました。
私はカラーモノクロともにフィルムで撮っていて、デジタルはもう動画用かポラ代わり、もしくは予備。
フィルム写真を学べば学ぶほど、プロセスは違っても、やっていることは同じだと感じるようになってきた。
多重露光だって、同じコマでやらなくたって別々に撮って同じ紙に焼いちゃえばいい。デジタルはそれがいとも簡単に済む、ただそれだけ。
しかし私はフィルム写真の過程を愛する。暗室が好きなのだ。
今回の記事は、ほぼ時系列順に私のプリントワークへの進歩をお見せする。必要な道具や薬品、注意点などをチョコチョコ述べていこうと思う。
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カラーフィルム→モノクロ印画紙は焼いたことがあったけれど…
うーん、ちょっと物足りないんだなー寒いので、ずっと家でプリント。
— ニコノス (@nikonosF) 2016年12月18日
10月のフィルムです。#photography #coregraphy #filmphotography #ポートレート #写真好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/NGMZzyD8oc
モデルさん(ゆいさん)の魅力をもっても、なんだかモノクロフィルム→モノクロ印画紙と比べると雰囲気が劣るというか、カラーで見た感動を超えられないというか…今思えば印画紙が古いものすぎてカブっていたからビミョーに見えたのかも。
でも、やっぱりカラーはカラーで焼きたい。
さて、印画紙どうしよう。
候補としては、フジの紙を買うか、もうこの際練習用として割安なDNPのものをロールで買ってしまうか(この場合全暗で裁断せねばならない)…
最初のうちは特別こだわらず安いもので…という考えもあるにはあるのだが、はじめての出会いはとても大切。ダメなもの(DNPの紙は使ったこと無いので未知数です)を大量に買い込むと、カラープリントを愛せず失意のうちに時間だけが過ぎていく可能性がある。
でも、慣れないうちからフジやKodakの印画紙をバンバン無駄にする(経験のためだから、完全には無駄じゃないのだけど)のは、さすがに気が引ける。
DNPのロール紙は安いし、便利な点もある。データシートをウェブ上に公開しているのだ。フジのは海外向けのものを逆輸入しているから、フィルターの基本補正値などがわからない。慣れれば問題ないが…
処理はRA-4。Kodakの印画紙用処方である。
この現像液でムービーフィルムを現像してしまうツワモノもいるが、私は怖くてできない。
印画紙はヨドバシなど家電量販店に置いてある。RA-4 Paper で検索すればB&Hhttps://www.bhphotovideo.com/bnh/controller/search?N=0&InitialSearch=yes&InitialSearch=yes&sts=ma&Top+Nav-Search&Ntt=RA-4 やFreestyle PhotoRA-4 Paper | B&H Photo Videoで安く買える。
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グズグズしているうちに、2017年になってしまった。
使わないモノやカメラ・レンズを売り払い、少々余裕ができたので購入に踏み切った。
最初はバンバン使うから、とにかく大量に、とFuji CAのロールとオリエンタルカラーのRA-4互換処理液を。カラー印画紙 of 写真創庫
結局フジの印画紙。CAというのはCristal Archiveの意で、飛行機に乗ると会えるお姉さんではない。
もひとつ下のサイズを註文する予定が、在庫切れで仕方なくこのサイズ(10inch×93m)。
どんな梱包で届くのかな、と楽しみにしていたら、厚ぼったいマックの袋みたいなのにドカンと入っていた。包みを開ければ即、印画紙とご対面。明室で開けたら1000円くらい簡単にパア(芯まで感光はしないと思うからこのくらい)。
※必ず暗室で開けること!
裁断機はこれを使った。
10inch≒25.4cm
四切の短辺の長さだ。
長辺が30.5㎝となるので、ある程度の大きさが必要。カラーは暗室灯が使えず全暗下での作業となるから、ガイドがないと手探りで裁断できない。
パーマセルテープを貼ってガイドとする。
トイレットペーパーのようにセットした印画紙を引っ張ってきてチョキン。
なんと5時間もかかってしまった。
恐るべし。93mもあるものね。この作業をまたやる日が来るのかと思うとウンザリするが😩…成果は大きい。四切+1cmくらいのサイズが80枚、10×10inchが100枚、六切が120枚ほどできた。私は元来モノを数えるのが大嫌いな上、正確に数えるのも嫌になるほど疲れたので、気になる方は計算してみるといい。箱で買うより(大幅に)コスパいいはず。
コダックのKHTデジタルペーパーは日本の代理店が印画紙ロールを裁断、箱詰めしての販売らしいので、手間はかかってもやっていることは同じだ。このCAペーパーは説明に「デジタル対応」とあるが、「対応」なだけで手焼きにウェイトがあるのは明白。
カットした印画紙の保管について、私はロールが入っていた袋に入れている。四切サイズとスクエアが入りきらなかったので、新しく暗袋を調達し、手を突っ込む所を折り返し、黒テープでガチガチに固めて入れている。暗室で二重ジッパーを開けたり閉めたり、出し入れが非常にメンドくさい。
印画紙(50,100枚入とか大きめ)の空箱を用意できるとベストかと思う。
ちなみに、長巻フィルムとか、印画紙なんかが入っている暗袋は、いろいろと重宝することが多いので、必ず保管するようにしている。例えば、段階露光に使うため細長く切った印画紙を入れるのに役立つ。
今のところ、印画紙は"冷暗所"に置けということで、物置に保管してある。
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カラープリントのバイブル。蛍光灯やタングステンライトの補正など、内容は多岐に渡る。
もちろん読んだからといってスグできるわけではない。スポーツの指南書と一緒だ。
「プロのため」らしく、カラープリントの自動プロセッサCP31の使い方なんて書いてあるが、肝心の機械が製造・サポート(2016年1月まで)ともに中止だし、中古で買っても8万は下らない。欲しいけど、欲しいけど…‼
こうなったらもうバット現像しかないではないか。
バット現像なんてムリだろ、と思ったそこのアナタ。実はKodakの公式ページに指南があるのだ。KODAK PROFESSIONAL セルフカラープリント
モノクロの20℃と比べると、温度管理がタイヘンだ。
恒温器の自作も検討したが、割とコストがかさむので熱帯魚用のサーモスタットで代用。
20℃-35℃の範囲で調節可能なモノを2台。発色現像+漂白定着用。どちらも35℃に合わせるのだが、冬で気温が低く、更に循環が行き届いていないこともあり、なかなか35℃に保つのは難しい。循環モーターを付けるか、ヒーターとセンサーが別々のタイプであれば、精度は高くなるだろう。もしかすると夏季なら丁度いい温度になってくれるかも知れない。手現像用の33℃/1minでもいいとしよう。
ロールから切り出した印画紙は湾曲が強いので、紙全体を液に浸すにはトングじゃ役不足。よって、ラテックスの手袋を二重に装着して手で押さえながら浸けている。
(※二重にせず長時間作業していると、どこかから確実に浸水するので、健康のために実施して欲しい。)濡れた手は、専用のタオルを用意して拭こう。
また、素手や布手袋で乳剤面に触ると、変な跡がついてしまうので、左手にもゴム手袋がいいだろう。
秒針の音が聞こえる置時計を頼りに35±0.6℃で45秒。感覚で「少し下がっているな」という時は延長するなり、乳剤面をナデナデするなりで処理を進める。
このとき出来るだけ液を撹拌し、温度を均一にする。ちょっと感覚的だが仕方ない。でも、やればわかる。
水ですすいで、漂白定着45秒。こっちは許容範囲が35℃±3℃だからテキトーに。
モノクロ印画紙なら停止が終わり、定着液に入れた瞬間明かりをつけてよいが、こちらは定着も暗室で行うべし。そうしないと、みるみるうちに色が変わっていく。
そして、最も難しいのがカラーフィルターの数値である。
まず、ネガ→ネガ印画紙の仕組みはネガフィルムと同じで、色の反転したネガ画像を印画紙に露光すると、反転の反転、つまりネガのネガでポジになる…
ま、あまり難しく考えると分からなくなる。紙を2回裏返すみたいな話だ。
ここからが本番。
光の三原色YMC(順にイエロー、マゼンダ、シアン)のフィルターを使い、自分の欲しい色に近づけていく。
イエローが強ければYフィルターを強め、ブルーが足りなければMとYを、などなど…
ただの法則であるから、参考書と首っ引きで経験を積み、覚えてしまえば単純なこと。ネットにも資料はある。
以下に私が焼いた何枚かをデータとともにお見せしよう。スキャナやモニターの環境により色の出方が違うので、正確にお届けできる自信がないからネガスキャンの写真のみを載せることにした。プリントとあまり色は変わらないので参考にはなると思う。
ついでに言っておくと、ネガスキャンはかなりイメージに近い。スキャンされたデータを超えるプリントを作るには、一定の努力と経験を積む必要がある。
Fuji X-TRA400・C6 M90 Y60 F11・6sec バックの白覆い気味で
Pro160NS・C5 M30 Y80 F11・5.5sec 空覆い(-2EV)
Ektar100・C5 M90 Y90 F16・14.5sec 下半分覆い(-1EV)
訓練されたプリンターの方であれば、大まかでも判断して補正できるのだが、ズブの素人だと、なかなか細かい数値の補正には目が回らない。わからなすぎて目が回る。
濡れている時と乾燥後の色が違う気もする。また、観賞環境の光源も大きく影響するのだ。懊悩。
印刷の色校正など、カラーを扱う会社の照明には、演色性に優れたライトが用いられているらしい。
演色性とは、Ra100を最高として自然光にどれだけ近いかを示す尺度であり、一般的に90以上のものが色評価用の光源として認められている。
初めてのカラー暗室ではタングステンライトの下でプリントを見ていたので、全然わからなかった。しっかり見たいときは一度、屋外へ出て確認していた程だ。
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風呂場の電球をRa90のこれに替えた。本当に快適。
ああ、初期投資がかさむ。カメラもレンズも売れるだけ売った。
さあ始めよう。
一般的なユニットバスを暗室として使う方法を解説する。
図のように、重みに十分耐えうる蓋(←これ大事)をバスタブに載せ、それを机代わりにする。引き伸ばし機を置き、バットを並べて水洗まで動線をつくる。「現像」「定着」は「発色現像」「漂白定着」と言い換えてもいい。(停止)と書いたのは、モノクロのとき流しにクエン酸停止液を入れているからであるが、カラーでも現像液が定着液に混ざるのは極力避けたい。よって紙についた現像液を水で一旦すすいでから定着に移っている。
水洗はプリントウォッシャーがあれば最高なのだが、4切サイズで10万円とかフザケた値段なので、代用品を。無印で売っている、A4サイズのクリアケースにワイヤーネットで仕切りを作って使う。焼肉の網は加工しにくそうなのと、印画紙を傷つけそうなので、コーテッド網がいいと思う。
ルミナス ポール径25mm用パーツ 収納性アップパーツ サイドネット 取付用S字フック付き 41×75cm NT4576
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私は大きくて安いのを100均で入手し、ニッパーで切って使っている。
クリアケースの側面、下の方に親指の付け根大の穴が開いているので、コルクやテープ、または耐水グルーで塞ぐべし。
次の紙を焼いている間に水洗を済ませ、ある程度溜まったらドライウェル浴、ドライヤーで乾燥。
あんまり長い時間水に浸けておくと、端っこがシナシナになってくる。ここだけの話、忘れて半日くらい水中に放置したことがあって、気付いた時かなり焦ったが乳剤面は何ともなかった。
出来上がったプリントは、重ねずに一晩くらい室内に置いて、完全に乾かしてから大きな本に挟んで平らにした上、印画紙の空袋に入れて保管している。無酸性の薄紙を間に挟んでこれまた無酸性のストレージボックスに収納するのが正統派だが、プリントだけで精一杯なのと、置く場所さえないのでこの状態に甘んじている。
カラープリントをしてみて良かったことは、撮影時に露出をしっかり出すようにしたこと。ネガだから、と甘く見ていたが、やはり適正露出のネガから最も美しいプリントが生まれる。
冒頭でも述べたが、気付いたことは自分の色を探して、それを大きくプリントする行為はデジタルと何ら変わりがないということ。フォトショップは「デジタル暗室」だ。でもフィルム写真の雰囲気は、まだデジタルでは表現できない部分が多い。だから、ちょっと腰や懐が痛くても自分はやっぱり暗室かな、と思う。
大きく伸ばしてみると、レンズごとの違いとか、フィルムの違いを痛感することになる。
特に35mmカラーフィルムに関しては、大伸ばしの際「汚いな~」と思うことがある。プロ用フィルムはちょっとマシ。
だから私は、引き伸ばすだろう写真に関しては、35ミリについてはほとんどモノクロで撮っている。モノクロなら粒子が多少荒れていても「カッコいい」になるから。
これは今の私の感想であり、また変わるも知れない。突然「画質悪い感じがイイんだよ」とハーフ判でバリバリ撮りはじめるかも。
最初は文字通り暗中模索だったが、段々と色もわかるようになってきた。読者の皆さんにとって、この記事が少しでも参考になれば幸いであります。